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現代法学 Tokyo Keizai Law Review >
030号 >

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タイトル: 仕組商品の規制 : 商品適合性、時価・手数料開示の先にあるもの
その他のタイトル: Reconsidering the Regulation of Structured Products : Going Beyond Suitability and the Disclosure of Fees and Fair Value
著者: 桜井, 健夫
SAKURAI, Takeo
抄録: 日本における仕組商品の規制について、米国、EU、英国の規制と比較して検討 する。 米国では、仕組商品などの複雑な金融商品の普及を受けて、FINRAが、業者の 商品熟知義務を含めた合理的根拠適合性(商品適合性)を適合性原則に追加し (2012年)、SECが、業者に対し発行者評価額の開示を粘り強く要請して(2012 年〜2013 年)、2013 年以降、仕組商品の目論見書の表紙に発行者評価額を記載 させている。このような対応にもかかわらず、その後、仕組商品の販売高がさら に増加しているので、2015 年になって、SEC は、投資者に対し発行者評価額が 目論見書に開示されているので注目するよう広報し、業界に対しては顧客が構造 やリスクを理解しないまま取得している現状に疑問を投げかけている。 EUでは、IOSCOの報告書「複雑な金融商品の販売に関する適合性要件」、「リ テール向け仕組商品に対する規制」(いずれも2013 年)を踏まえたESMA の仕 組商品意見書(2014 年)が出され、引き続きMiFID II、MiFIR が制定された(2014年)。仕組商品関係では、組成段階での商品適合性、コスト開示義務、不合 理な商品等に対する規制当局による販売停止権限などが規定されている。 英国では、2012 年にFSA が仕組債の最終ガイダンスを公表し、2013 年には、 FSA を引き継いだFCA が、仕組商品を勧誘する場合の注意点を業界に通知した。 それでも、仕組預金等の販売が増加しているので、FCA は、2014 年には仕組預 金等に関する定性的調査を外注し、2015 年には仕組預金に関する行動経済学的 調査を行った。これらの調査により、消費者は仕組預金のリターンを過大評価す ること、そのため、定期預金の方が有利であっても仕組預金を選ぶ傾向があるこ とが裏付けられた。この過大評価による選択ミスは、リターン見込みの数値的開 示等の定量的開示をすれば多少改善するものの、限界がある。2015 年、FCA は 業界に対して、リターン見込み・元本欠損リスクの程度の数値的開示を求め、組 成販売しようとする仕組商品が合理的な価値を持つことを証明することを求めて いる。 日本では、金融庁が2010 年にデリバティブに関する監督指針の一部を仕組債 にも適用することとし、2011 年には日本証券業協会が合理的根拠適合性を導入 した。2012年には金融庁が通貨選択型投信に関する監督指針を改正し、2013年 には日本証券業協会が自主規制規則に高齢者への勧誘に関する条項を追加した。 2015年、金融庁は手数料透明性の向上を平成27年度行政方針に記載した。 各国で組成販売されている主な仕組商品には相違があるが、いずれもデリバテ ィブが組み込まれた複雑な構造で投資判断が難しいこと、仕組コストがかかるの でリスクとリターンのバランスという観点からの商品合理性が問題となることは 共通しているので、各国の規制は適合性原則を商品適合性の方向に拡大強化して いる。同時に、米英では情報提供の工夫(発行者評価額・コストの開示、リター ン見込み・リスクの程度の開示)がされていて参考になる。ただし行動経済学的 要因等によりリターンの過大評価傾向があるので、それだけでは足りない。そこ で、発行者評価額等の情報提供に加え、商品適合性を一歩進めた商品規制、勧誘 規制が必要である。
出典: 現代法学 = Tokyo Keizai Law Review
発行日: 2016年2月26日
出版者: 東京経済大学現代法学会
巻号: 30
開始頁: 241
終了頁: 295
URI: http://hdl.handle.net/11150/10778
ISSN: 1345-9821
出現コレクション:030号

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